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植物ステロールについて

目次

 

  1. 植物ステロールとは?

 ◆ コレステロールと植物ステロール

 ◆ LDL(悪玉)-コレステロールとHDL(善玉)-コレステロール

 ◆ 植物ステロール摂取の必要性
 

  1. 植物ステロールの効能

 ◆ LDL-コレステロールの低減

 ◆ コレステロール生合成阻害剤との併用

 ◆ 有効摂取量について

 ◆ 冠状動脈性心疾患(CHD)リスクの低減

 ◆ 中性脂肪の低減
 

  1. 化粧品への配合

 

  1. 植物ステロールの安全性

 

 

  1. 植物ステロールとは?

コレステロールと植物ステロール

自然界に存在するステロールは、動物性のコレステロールと植物性のステロール(植物ステロール)に大別されます。
 
コレステロールは単一の化合物ですが、植物ステロールには多くの種類があります。

一般的な植物に見られる主要な植物ステロールは、β-シトステロール、カンペステロール、スティグマステロールです。
 
以下の図に示すように、コレステロールと植物ステロールは、その構造がよく似ています。
 

 

◆ LDL(悪玉)-コレステロールとHDL(善玉)-コレステロール

コレステロールはヒトの生体膜(細胞膜)や消化吸収に必要な胆汁酸、ホルモンなどの材料となる重要な物質で、人体にとって必要不可欠な成分です。
 
脂質の一種であるコレステロールは、そのままでは血液に溶けないため、たんぱく質と複合体(リポタンパク質)を形成して血漿中に存在しています。
 
この複合体の比重の違いにより、コレステロールは高密度リポタンパク質(HDLまたはHDL-コレステロール)と低密度リポタンパク質(LDLまたはLDL-コレステロール)に大別されます。

リポタンパク質の密度が大きいほど、タンパク質の割合が大きく、逆に脂質(コレステロール)の割合は小さくなります。
 
LDL-コレステロールは、コレステロールを全身の組織に運ぶ役割を担っています。

しかし、血中のLDL-コレステロールが増えすぎると、余分なコレステロールが血管壁に蓄積し、これが動脈硬化を引き起こします。

そのため、LDL-コレステロールは「悪玉コレステロール」と呼ばれています。
 
一方、HDL-コレステロールは、血管内で余っているコレステロールを回収して肝臓に運びます。

血管壁に溜まったコレステロールも除去して動脈硬化の進行を防ぐ役割があるため、「善玉コレステロール」と呼ばれています。

 

◆ 植物ステロール摂取の必要性

植物ステロールは植物性食品や植物油(特にこめ油)に含まれており、ヒトは野菜や果物、植物油から毎日300 mg前後の植物ステロールを摂取しています。
 
植物ステロールは栄養素ではないため、必ずしも摂取する必要はない物質です。

しかし、約70年以上も前から植物ステロールには血清総コレステロールおよびLDL(悪玉)-コレステロール濃度を低下させる作用があることがよく知られており、これまでに様々な食品に添加されたり、特定保健用食品(トクホ)に利用されたりしています。
 
日本人の3大死因は悪性新生物(腫瘍)、心疾患、脳血管疾患(※ただし最近では脳血管疾患よりも老衰が上回る)であり、心疾患と脳血管疾患を合わせた動脈硬化性疾患が全死因の30%を占めています。

20歳以上の日本人の3人に1人が高コレステロール血症(血清総コレステロール濃度220 mg/dL以上)であると言われ、これが動脈硬化性疾患の主要因であると考えられています。
 
動脈硬化は、血管内皮細胞下に低密度リポタンパク質(LDL)が入り込むことが引き金となり発症する病態であり、発症には血清総コレステロールおよびLDL-コレステロール濃度の上昇が大きく影響することが、多くの疫学調査により報告されています。
 
血清総コレステロールおよびLDL-コレステロールを下げる効果を持つ植物ステロールは、このような動脈硬化性疾患を予防するために、ぜひとも積極的に摂取したい機能性成分なのです。

 

  1. 植物ステロールの効能

◆ LDL-コレステロールの低減

上述したように、植物ステロールについては約70年以上も前から研究されており、経口摂取すると3週間程度でLDL-コレステロール濃度が低下することが知られています。
 
この効果は小腸におけるコレステロール吸収阻害作用によるものであることが解っています。

摂取したコレステロールは、遊離脂肪酸、モノグリセリド、リン脂質や胆汁酸とともにミセルと呼ばれる粒子を形成することにより、小腸に吸収されます。

ここに植物ステロールが共存すると、より疎水性の高い植物ステロールの方が優先的にミセルに取り込まれるため、ミセル化されるコレステロールの量が相対的に減少します。

その結果、小腸に吸収されるコレステロールの量が減少します。
 
なお、植物ステロールの摂取でHDL(善玉)-コレステロール濃度はほとんど変化しません。

 

◆ コレステロール生合成阻害剤との併用

植物ステロールは、コレステロール生合成阻害剤と併用することができます。

HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)治療を受けている高コレステロール血症患者に、植物ステロール強化食品(植物ステロール2.5 g/日)を摂取させると、LDL-コレステロール濃度が10–15%減少することが報告されています。
 
スタチン系薬剤は肝臓でのコレステロール合成を抑えて血中のLDL-コレステロール濃度を低下させるのに対し、植物ステロールは小腸でのコレステロールの吸収を抑えるため、両者を併用することでより高い効果を得られると考えられます。

 

◆ 有効摂取量について

以前の臨床研究では多量(10 g/日以上)の植物ステロールが用いられ、血清総コレステロール濃度の10~20%の低下が見られました。

しかし近年では、3 g/日以下の植物ステロールで十分有効であることが多くの臨床試験で示されています。
 
多くの臨床試験のメタ解析から、2 g/日の植物ステロールを摂取すると、LDL-コレステロール濃度を10%低減できるという結果が得られています。
 
このLDL-コレステロール低下作用が期待できる植物ステロールの摂取量の最少量は、遊離型換算で0.8 g/日(エステル型では1.3 g/日)と推定されています。
 
血清総コレステロール濃度が高い人ほど、植物ステロール摂取の効果が現れやすく、1.5~2 g/日の摂取で、より明確な効果が得られると報告されています。

 

◆ 冠状動脈性心疾患(CHD)リスクの低減

血清コレステロール濃度が0.6 mmol/L(約10%)低下すると、冠状動脈性心疾患(CHD)の発症率が

40歳で54%
50歳で39%
60歳で27%
70歳で20%
80歳で19%

低下することが示されています。
 
植物ステロールの摂取によるCHD発症率の低減効果を直接調べた研究はありませんが、植物ステロールが血清総コレステロールおよびLDLコレステロールを低下させることは多くの臨床試験で確認されています。
 
2000年に米国食品医薬品局(FDA)は、「植物ステロールがCHDのリスクを低減させる」という健康強調表示の使用を認めました。
 

◆ 中性脂肪の低減

中性脂肪(トリグリセリド)はコレステロール同様、血中脂質の1つです。

血中脂質にはコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4種類があります。
 
中性脂肪は体内において、主にエネルギー貯蔵物質として働きます。

これが過剰になると、肥満や動脈硬化を加速させるなど、健康上の様々な問題が生じます。
 
幾つかの研究で、植物ステロールを摂取することにより、高めの中性脂肪値が改善したり、食後の血液中の中性脂肪濃度の上昇が抑えられた例が報告されています。
 
植物ステロールはLDL-コレステロールだけでなく、高めの中性脂肪の値も低減することにより、血液中の過剰な脂質分を抑制し、動脈硬化ならびにそれが引き起こす脳梗塞、心筋梗塞など数々の動脈硬化性疾患を予防する効果があります。

 

  1. 化粧品への配合

植物ステロールは構造ならびに化学的性質がコレステロールに類似しているため、コレステロール同様に乳化安定化、エモリエント効果、リポソームの安定化効果を有します。

特に植物由来をコンセプトにしている製品などで、植物ステロールがコレステロールの代わりに使用されています。
 
化粧品への配合目的:
 
(1) 乳化安定化
植物ステロールはコレステロール同様に親油性乳化性能を有しており、親水性乳化剤とともにo/w型エマルションに配合することで、乳化物を安定化させます。
 
(2) エモリエント効果
皮膚に対する作用がコレステロールに類似しており、皮膚親和性および皮膚浸透性が良く、皮膚に柔軟性や滑らかさを付与します。
 
(3) リポソームの安定化
リポソームはリン脂質の二重構造を持つ小胞であり、内部に閉じ込めた有効成分を体内に届ける輸送体として利用されています。

コレステロールにはリポソームを安定化させる作用があるため、植物ステロールも同様の目的で使用されています。

植物ステロールを用いる場合、水添レシチンを乳化剤として併用したリポソームが汎用されています。

 

  1. 植物ステロールの安全性

植物ステロールは植物性食品(野菜や果物、穀物など)や植物油に含まれている成分であり、ヒトは通常の食事から1日に300~400 mg程度の植物ステロールを摂取しています。

古くから食経験が豊富にあり、安全性に関する研究も多くなされています。
 
植物ステロールは難吸収性で体内に取り込まれにくく、わずかに吸収されても体内蓄積性がないため、安全性は非常に高いと認識されています。
 
実際に、長期臨床試験および1日あたり25 gまでの大容量植物ステロール投与試験において、重大な副作用や有害事象は報告されていません。

(※ただし、極めて稀な遺伝的疾患である植物ステロール血症(シトステロール血症)の患者については、体内に植物ステロールが蓄積し、それが黄色腫や早発性冠動脈疾患といった症状を引き起こす原因となるため、植物ステロールの摂取を制限することが推奨されています。)
 
したがって、植物ステロールは高コレステロール・高中性脂肪に起因する動脈硬化性疾患の予防に有効で、多量に摂取しても害のない、身近で安全な健康機能性成分と言えます。

 
ファイトケミカルプロダクツ株式会社では、米油を製造する際に副生する未利用油から、植物ステロールを回収することに成功しました。
 
米ぬか由来の植物ステロール「こめステロール」として、販売しております。
また、これを用いたサプリメントの開発も進めています。
 
食品添加物や特定保健用食品(トクホ)の開発、化粧品原料などに、ぜひ弊社の「こめステロール」をご利用ください。
 

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